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讀賣新聞 2003年3月13日(木)
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地域通貨 芽生える コミュニティー

小規模なコミュニティーの中で人々が自ら作り、流通させているのが地域通貨だ。実際に使ってみてわかったことを、運営に携わる人たちに尋ね、それが現代社会の中でどんな役割を果たしていくのかを探った。(渡辺達治)

通貨「ZUKA」は二千年夏から、兵庫県宝塚市内で使われている。戦後、住宅地として発展したまちが高齢化に直面し、阪神大震災をきっかけに住民のつながりの大切さが見直される中、NPO(非営利組織)などで組織する運営委員会が発行した。

約五百組の参加団体・個人に紙幣が配られる。三十分間のサービスを受けたら、一千ZUKA紙幣を支払うのが目安だ。

配布されるリストに、どこのだれが「何ができるか」「何をしてほしいか」が載っている。内容は、庭の手入れ、手話、子供服作り、祭りの補助など多岐にわたる。それを見て互いに連絡を取り合う。知らない相手と交渉しにくければ、コーディネーターが間を取り持つ。

中高年の主婦、退職した男性が中心となり、昨年までに約千三百件のサービスが交換された。円との交換は不可で、ためても利子はつかない。

日銀・政府発行のお金を使うのと違い、ZUKAなら「コミュニティーの成員同士が、ありがとうの気持ちを受け渡ししながら、程良い距離感を持ってふれ合える」と、運営委事務局の山本麗子・宝塚NPOセンター理事は説明する。

成員間の心理的距離が遠すぎると、いつまでも他人のままだ。逆に近すぎると、内輪の関係に閉じていく。地域通貨を介してサービスを受ける仕組みを設けたことで、遠かった人々が顔を合わせ、内輪にこもりがちだった人は、外部に働きかけるチャンスを得る。

山本理事は「システムをさらに改良し、団塊世代が定年を迎える近い将来、その受け皿にしたい」と話す。住民同士の距離をどう設定していくのか、引きこもりなどの社会現象を考える上でも示唆に富む。

インターネット上の通貨「姫」は、岡田真美子・姫路工業大教授(環境人間学部)らのNPOによって運営され、姫路地域を中心に全国の約三百人が利用している。

ホームページ(http://1000hime.jp)で住所や名前などを登録、掲示板で売り手と買い手が出会う。通貨の授受もネット上で行い、残高が各人の「口座」に表示される。

一昨年秋の解説以来、卒論への助言、北国の雪便り、化粧教室など約二千七百件を各数百─数千「姫」でやり取り。年齢や職業、居住地を超えて知人ができて、対面のつき合いに発展するケースも多いという。

「特技や知識を生かして互いに恩恵を与える。「姫」を介する関係は、かつての農村の慣習、無償で仕事を助け合った手間換えのよう」と岡田教授。

円による売買は効率的だが、そのつど関係が精算される。もうからないサービスは除かれる。「姫」を使うことで、小さいながらも信頼と遊び心で成り立つコミュニティーが芽生えた。

地域通貨は、世界的不況の一九三〇年代、欧米で多数作られたが、ほとんどが後に廃止された。八〇年代以降、再び盛んになったが、これは世界市場の荒波から地元経済を守るため、あるいは地域社会を再構築するためといった観点からで、米の「イサカアワー」、アルゼンチンの「RGT」などが著名だ。

欧州通貨統合に携わったB・リエター氏は著書「マネー崩壊 新しいコミュニティ通貨の誕生」(日本経済評論社刊)で、文化人類学の知見を援用して、コミュニティー衰退は、もともと「贈り物の交換」だったものが、競争を引き起こす「お金による交換」(公式通貨での取引)に取って代わられることによって起こると指摘。その流れを押し戻すのが、互酬性に基づく地域通貨の意義だと語る。

今や二百種類を超えるといわれる日本の地域通貨も、こうした世界的な動向の一部になっている。経済のグローバル化と並行して、手作りのローカルなお金による試行錯誤は、これからも続くだろう。


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